自叙伝・人類の涙をぬぐう平和の母 第25話

慕わしさと涙で染まった世界巡回

「お母さん、また荷物を詰めているのですか?」

すぐには答えられません。すると、私の隣で黙々と荷造りを手伝ってくれていた長女の譽進も、今さらながら尋ねてきます。

「お母さん、今度はどこに行くのですか?」

大きなカバンを取り出して服をたたんでいると、子供たちはすぐに気がつきます。母親がい


つもそばにいて、一緒に遊び、抱き締めてくれることを願う子供たち。しかし実際は、子供たちと一緒にいてやれない日のほうが多くありました。人との面会、教会の仕事、地方巡回など、すべきことが私を捕らえて放さなかったのです。海を越えて外国に行くとなると、カバンを取り出すところから、気苦労が絶えませんでした。

ただの旅行は楽しいものですが、ミッションを持って出発する旅路は、家を出た瞬間から緊張の連続で、心労が絶えません。また、旅先で豪華絢爛な宮殿に泊まっても、心は落ち着きません。そんな宮殿よりは、狭くて窮屈でも、自分の家で暮らすほうが気楽なのです。しかも、私が行くのは単なる旅行ではなく、ミッションを帯びた旅ですから、否が応にも緊張せざるを得ませんでした。

私は一九六〇年の聖婚以来、我が家にゆっくり落ち着いていることは滅多にありませんでした。休戦ラィン付近の小さな村から、離れ小島の村まで、全国を回りながら信徒に会い、忙しく行事と講演を行ってきたので、心安らかに休む日などありませんでした。

ひとたび海を越えれば、日本を皮切りにアジア、ヨーロッバ、北米、南米、アフリカまで、全世界を巡回しました。神様のみ言を伝えるために、異国の人を私の子女、異国の土地を私の家だと思って訪問しました。

世界巡回では、過密スケジユールの中、新しい都市に着くたびに合間を縫って、絵葉書を買いました。夜十二時過ぎ、ようやく仕事が終わったところで、私を待つ子供たちに便りを書くのです。

孝進へ

会いたいわ。いつでも呼んで、走っていって抱き締めてあげたい、良い子でかわいい、愛する息子。

孝進、少しの間、離れ離れですが、あなたたちは幸せな天の息子であり、娘です。

私たちの孝子、孝進!天の孝子であり、地の孝子、全宇宙の孝子、孝子の手本になる優しくて賢い孝子の孝進、愛しています。お父さんとお母さんは、み旨に従っていつも忙しい生活で、あなたたちと過ごす時間が少なくてとても残念だけれど、お母さんもお父さんもあなたがいるから、頼もしく思っています。

孝進、あなたは普通の子たちとは違います。他の子たちと一緒にいても、あなたの根本、天の品位を損なってはいけません。

お父さんとお母さんは、いつもあなたを誇らしく思っています。近いうちにまた会った時、お父さんとお母さんをたくさん、たくさん驚かせてくれますか?

お父さん、お母さんはあなたに対して、大きな夢を持っています。お母さんは待ち遠しく思いながら、いつも祈っています。元気でね。

一九七三年五月+二日、アメリカ•ベルべディアにて


私は、多くの公的な仕事のため、子供たちと一緒の時間を過ごせないことがいつも気掛かりでした。それでも子供たちは、立派に育ってくれました。ある日、長男の孝進がインタビューを受けました。

「お母さんのどんなところを尊敬していますか?」

孝進はためらうことなく答えました。

「父を支え、喜ばせる母の愛と不屈の精神を最も尊敬しています。世の母親は、みな偉大ですが、特に私の母は、私たちを絶対的に信じ、励ましてくれます。私はその姿にいつも深く感銘を受けています。世界的な仕事を担い、常に忙しくしている中で、十四人の子供を生んだことも本当に偉大だと思います」

私はどれほど暑い夏であっても、冷たい水でシャワーを浴びることは控えます。それは、子供をたくさん生んだ影響が残っているからです。医師が引き止める中、帝王切開も四回行いました。

Luke Higuchi